「海底地すべり」で想定以上の津波も シミュレーションで判明 NHKニュース 2018年3月3日

東日本大震災を教訓に、国などは各地で津波の想定を見直しましたが、地震で海底の土砂が一気に崩れる「海底地すべり」が起きた場合、局地的にさらに高い津波が起きるおそれがあることが、専門家のシミュレーションで新たにわかりました。専門家は「海底地すべりの起こりやすい場所を調べるとともに、できるだけ高いところへ避難する対策を検討することが必要だ」と指摘しています。

 

「海底地すべり」は地震などによって海底の土砂が一気に崩壊する現象で、海面が大きく変動し、津波が発生することがあります。

 

7年前の東日本大震災でも発生していたことを示す研究結果が出ているほか、国内外の地震でたびたび発生していたと指摘されていますが、どのくらい津波を大きくしたのかなどは詳しくわかっていません。

過去の被害 通常の津波で説明できないものも

伊豆半島の西にある静岡県の沼津市西浦江梨の寺「航浦院」には、15世紀の豪族、鈴木氏についてまとめられた古文書が残されています。

この中には「明応7年8月25日に津波が打ち寄せ、人々は数知れず海底に没し、鈴木家の家系図や家宝がすべて失われた」と記述されています。

鈴木家の屋敷は現在の「航浦院」の近くにあったと見られ、専門家の分析では、屋敷を襲った津波は標高およそ11メートルまで達したと見られていますが、静岡県が東日本大震災のあとに見直した南海トラフ巨大地震の想定では、津波が達する高さは最大でも5メートル程度で、かなり低くなっています。

常葉大学の阿部教授によりますと、いずれも海底の断層がずれ動いて発生する通常の津波だけでは、なぜこれほど高い津波が局地的に押し寄せたのか説明がつかないということです。

そこで阿部教授は海底地形に詳しい地質の専門家と協力して、駿河湾内で幅数キロの「海底地すべり」が4か所で発生したと想定し、シミュレーションしたところ、航浦院の周辺などに高さ10メートル前後の津波が押し寄せることがわかり、沼津市や焼津市などに残された記録とほぼ一致することがわかりました。


9年前の平成21年に駿河湾で起きたマグニチュード6.5の地震では、静岡県焼津市で地震の規模から考えられる津波より高い62センチの津波が観測されたほか、海洋深層水をとるために海底に敷設されていた管が流れてきた土砂で壊れました。

海洋研究開発機構などの調査では、焼津市の東5キロの海底で地すべりが起きたとみられる跡が見つかっています。


「海底地すべり」が関係したと見られる津波は国内や海外で数多く報告されていますが、詳細なメカニズムはまだわかっておらず、専門家は「過去の履歴や起こりやすい場所の調査を進める必要がある」と指摘しています。

「どこで起きてもおかしくない」


海底の地質に詳しい産業技術総合研究所の池原研首席研究員は「海底の地すべり地形は日本近海にもたくさんあるので、どこで起きてもおかしくない。具体的に対策に結びつけるには、過去どの程度の地すべりが起きたのかや将来のリスクなどを地域ごとに詳しく調べる必要がある」と指摘しています。